開所1周年に寄せて~無知と未知との遭遇から学んだ1年~

「無知」からのスタートを支えてくれたもの

横浜市寿地区は、私の「無知」を実感として教えてくれたまちである。
縁あって「ことぶき協働スペース」の運営に関わり、このまちの記録を紐解き、現在の活動に触れ、「自治と連帯」という市民活動の原点を見たように思う。
年を重ねても自分の「無知」に気づける出会いはありがたい。

私にとっての縁結びの施設は、2019年6月1日に誕生した。
この施設もまた、「無知」からスタートしたといって間違いないと思う。
設置者である横浜市と協働運営者の名を連ねた私たちNPOの職員は、「無知」であるが故の学びをまちの人々からいただくことを開設1年目の基調に据えてきた。

開店祝い花輪

眼差しが問われる現場の本質とは

寿地区には、高度経済成長を支えた人々の汗と涙をうけとめてきた簡易宿泊所が建ち並ぶ。
社会情勢の変化や住民の高齢化に伴い、労働者のまちから福祉ニーズの高いまちに変容した現在でも、危ないから立ち入ってはいけないと子どもに教える親がいるという。
ネット上で検索すれば、危険な香りを漂わせる記述が映る。
それが偏見であることに気づいた私たちは、「無知の知」からの学びについて社会に発信しなければならないと自覚してきた。
平均3.4畳の狭い居住空間でも、リビングスペースで寛ぐように広場に人々が集う。

まちの中心を交差する道端で座り込む光景も日常である。
半面、簡易宿泊所の一角で誰にも看取られず孤独に死を迎える人もある。
寿地区に限らず、孤立化を生む社会的距離は日本社会の課題の一つである。

生活館角

「未知」が拓く可能性は寿地区に限らない

そして今世界中で、孤立を生まないための取組は喫緊の課題となっている。

「未知」の脅威である新型コロナウイルスは、この課題解決を加速させる一因といえるかもしれない。
私たちはウイルスとの共存から何を学べるのか。
非常事態の中で耐え難い苦しみや悲しみが増大してゆく報道に胸を痛めつつ、誰もが自分にできることを精一杯尽くす試みの数々にも励まされてきた。

医療も経済も文化も、一人一人の命を護り、不安から救うことを最優先とし、「新しい生活様式」の必要を自らに問いかける。
行きたいところに行けない、会いたい人に会えない不自由も、一定の距離や制約の仲介により、これまで知らなかった楽しみ方に変えられないか。
テレワークやオンライン会議で得た気づきは、一面においては社会的距離を縮め、時空を超えた交流につながる可能性を拓いていかないか。

非常時に連帯が生まれる寿の底力

寿地区を感染症から護る取組が、地域の医療者・介護者から立ち上がっている。
遠隔で各専門職をつなぎ、協働して住民の安全を護る情報プラットフォームである。
この事務局機能を担う中、寿地区共有の「知」がまた一つ開かれていくのを感じている。

開所1年をコロナ禍の中で迎えたことぶき協働スペースであるが、苦境から地域連帯の力を生み出す、この地域の底力に心からの敬意を表する毎日である。

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