寿地区とともに歩む、ひとりの住民として。

ことぶき協働スペースに勤務するようになって、3か月を終えようとしている。
とはいえ4月と5月は緊急事態宣言発令を受けて臨時休館となったため、
6月に入ってようやく、私にとって初めての住民とのふれあいがはじまった。

渇望していた寿地区との交流をスタートするにあたり、考えてみたいことがある。

「住民」の意味を問う

私たちが日常的に使っている「住民」という言葉。
ことぶき協働スペースは地域団体や住民との交流連携を標榜しているが、
そこで交流・協働する「住民」とは何を指すのであろうか。

まず事典を引いてみよう。

地方自治法上,普通地方公共団体の人的構成要素をいう。自然人たると法人たるとを問わず,また,人種,国籍,性別,年齢,行為能力のいかんを問わず,市町村の区域内に住所を有する者はその市町村およびこれを包括する都道府県の住民となる(地方自治法10条1項)。地方公共団体は,住民自治の理念に基づき,地域社会の公共事務をその地域社会の住民みずからが処理するために設けられた一種の統治団体であるが,住民は,このような地方公共団体の人的構成要素であるとともに,地方自治運営の主体たる地位を与えられている。

■「世界大百科事典 第2版」の解説

この説明からは地方自治体における要素たる住民の概念が伝わる。
しかし住民の説明からは「人」のリアリティや、
「生活」のグラデーションが見えず、何だかしっくりとこない。

では別の事典ではどうか。

市町村の区域内に住所を有する同時にその市町村を包括する都道府県住民でもある。人種,国籍,性,年齢,行為能力のいかんを問わず,自然人,法人を問わない。住民は,法律の定めるところにより,その属する都道府県および市町村の役務の提供を等しく受ける権利を有し,その負担を分任する義務を負う (地方自治法 10) 。また,住民は住民監査請求権,住民訴訟を提起する権利をもち (242条,242条の2) ,さらに日本国民である住民は,その属する地方公共団体の選挙権,被選挙権,条例の制定改廃請求権,事務の監査請求権,議会解散請求権,おもな公務員の解職請求権をもつ (11~13条) 。

■「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典」の解説

こちらの説明では「区域内に住所を有する者」とある。
住民の権利について詳しい。
寿地区で活動するにあたり、選挙権をはじめとした政治参加、住民参加についても考えていきたいと思っている
寿地区自治会はかつてこのようなキャンペーンを打ったことがあった。

寿町で横浜市長選にむけ「選挙に行こうキャンペーン」
https://www.hamakei.com/headline/1518/

大辞林はやはり外せない。

その土地に住んでいる人。

■「大辞林 第三版」の解説

…このくらいシンプルな説明が望ましい。
だがしかし、これも求めていた解答ではない。
寿地区における「住んでいる」の定義はあいまいにして多様だからだ

横浜市に見る先進的な取組

寿地区では生活保護を受給している方が少なくない。
65歳以上の高齢者に限っていえば、高齢者人口の95%以上が生活保護を受給していると考えられている。
生活保護の受給には住民登録(住民票)が必要だが、
簡易宿泊所は宿泊施設なので、多くの自治体では簡易宿泊所に住民票を置くことはできない

ところが横浜市では簡易宿泊所で住民登録することが可能であり、
それが大阪の「釜ヶ崎(あいりん地区)」とは決定的に異なる点だ。

折しも6月17日付けで国から全国の自治体に向けて、「簡易宿泊所やインターネットカフェといった一時的な宿泊施設でも住民登録を認めてよい」旨の通知が出された。

簡易宿泊所も住民登録を認める 10万円給付で総務省が通知
https://this.kiji.is/645920770299855969

引用元:一般社団法人共同通信社

これは特別定額給付金10万円の受給に際して、住民登録がない方への救済措置だ。
コロナ禍のセーフティネットとしての対策から、全国に先んじた寿地区の役割や横浜市の制度設計が見えてくる

地域に根ざした活動に向けて

寿地区には、自宅に住む方はもちろん、簡易宿泊所の利用者や帳場、医療や介護関係者、福祉施設の職員、スーパーや弁当屋、酒屋、飲食店、倉庫などで働くたくさんの人がいて、少数だが野宿者もいる。古くから住まう住民もいて、自治会もある。

寿地区にも子どもたちがいて、しばしばことぶき協働スペースに遊びに来る。ほかにも車いすの方、作業所で働く方、毎日のように交流を求めて訪れる方、自作のカンカラ三線を弾きに来る方、ボランティアの方、ものづくりに関心がある方、銭湯「翁湯」に行く途すがらスペースに興味関心を示してくれる方…。

先のコロナ禍でマスクや物資の寄贈に訪れてくださる方も増えた。

ことぶき協働スペースでは今、簡易宿泊所やアーティスト、映像作家、就労継続支援B型作業所などとの協働を少しづつ進めている。また、簡易宿泊所を対象にしたアンケート/ヒアリング調査で多くの帳場と対話を重ねている。地域行事の打ち合わせや活動にも参加させていただいている。

スペースで「待つ」のではなく、スタッフ自らが町に出て、人を「訪ねる」。
私たちが担う現場はスペース運営をはじめ、その町と人との交流にある。
制度や条例に温度を持たせ、潤滑油として自らまず転がってみるのも「協働」のはずだ。

寿地区は、港湾業、建設業、土木業など、横浜市や日本における経済発展の礎として、
最前線で貢献してきた労働者の町であった。

私たち「も」そうした現代史を生きている。

介護や看護、福祉の町に変わりゆく町の変化を見つめ、
私は同じ「住民」のつもりで働いている
これからも連帯と協働の創出をすすめたい。

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