女子少年院の少女たちに迫った映画「記憶」を見てきました

 横浜市西区BBS会は今年で発足40周年を迎えられたそうです。40年間も絶えることなく続いているボランティアって素晴らしいですね。
日本の更生保護が民間の力に支えられてきたという事実に改めて心服します。
 さて、40周年記念事業のひとつとして神奈川公会堂で上映された「記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡」(監修・監督:中村すえ子)を拝見してきました。この映画は女子少年院に入院する4人に焦点を当て、彼女たちの生い立ちから非行に至り、少年院に保護されるまでの「記憶」を辿ったドキュメンタリー作品です。まだご覧になっていない方もいると思うので詳細には触れませんが、4人の非行の背景にはそれぞれ複雑な生育環境がありました。

映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』公式ウェブサイト

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 映画では名前・顔・声を伏せている以外、少年の生の姿を映していました。あくまでドキュメンタリーに徹し、余計な編集や説明はなく、結末らしい結末もないので、正直見終わった時は「え、これで終わり?」という印象を受けました。しかし登場人物の人生が道半ばであることを考えると「続きが気になる」と感じる構成こそ真実なのだと思います。


 上映会のあと、監修・監督の中村すえ子さん、映画にも登場した第5の主役ともいうべき黒川洋司さんによるトークセッションが開催されました。


 中村さんには、10代の頃に傷害事件を起こして少年院に入院した経験があります。出院後は支えてくれる大人の存在や母の愛情で更生し、今では自分と同じように少年院を出た少年を支援する活動を続けておられます。そんな中村さんが女子少年院を舞台に映画を撮ろうと思ったきっかけは「彼女たちは加害者である前、被害者だった」という事実を多くの人に知ってもらうためと述べておられました。
 私もこの映画を見て、少年が非行に至る原因は、少年自身の問題性もさることながら、彼女たちが育った家族や環境にも多くの原因が潜んでいるということに気付かされました。

 そして大阪で、刑務所出所者や少年院出院者を受け入れ、彼らの社会復帰を支援する「良心塾」を運営する黒川さん。映画の中では彼の厳しさが際立っていましたが、実際は熱い思いと優しさを兼ね備えた方でした。トークセッションでは「彼女を信じ支えてくれる大人がたった一人でもいれば、彼女はきっと大丈夫」と述べられました。

 中村さん黒川さんとも「昔の非行少年といえば持て余したパワーを発揮する方向性を誤った若者が多かったが、今の少年が非行に至る背景は複雑だ」という共通認識を持っておられるようでした。近年、少年事件の認知件数・検挙件数とも減少傾向にあり、それ自体は喜ばしいことです。しかし非行少年それぞれが抱える問題は複雑さを増しており、これまで以上に少年一人一人の特性・環境に沿った支援が必要とされているように思います。


 民法の成人年齢の引き下げを2022年に控えた昨今、少年法適用年齢も引き下げるべきとの論調が強まっています。こうした意見の中には「刑務所は厳しく、少年院はぬるい」という誤解があるように思います。しかし刑務所と少年院はそもそも目的を異にするもの。刑務所は刑罰を執行するところですから、受刑者が自身の問題性に目を向けたり、家族等との関係性を改善するような手厚い処遇は行えません。
 少年院は非行少年の保護を目的とし、在院者の生活態度、言葉遣い、立ち居振る舞いから考え方まで365日職員から指導を受け、家族へのサポートも行うことができます。日本が世界に誇る少年法。適用年齢引き下げについては民法改正に引きずられることなく、慎重に進められるべき議論と思います。