出会いを通して

 

今年4月から寿地区で働き始めて8か月が経った。
よく訪ねてくださる住民の方々の名前を大分覚えたが、寿地区に住んでいるほとんどが男性であるため、訪ねてくる方もほぼ男性である。

 

だが、地区内を歩いていると、エプロン姿で高齢者の手を引いて歩いていたり、車椅子を押していたり、おそらく介護職に携わっているのだろうと推測される女性をよく見かける。
時折すれ違う女性同士で情報交換等しながら、皆さん寿地区で働いている。
その他にも病院や福祉施設など、そこで働く女性は多い。

 

普通に勤務していると、寿地区に関わってきた女性の方の話を聴く機会が無いため、当スペースの近くにある福祉作業所で長年ボランティア活動を続けてきたという女性にこちらからお話を伺う機会を設けていただいた。
彼女は“縁が無い”というのが寿地区の問題だと話してくださった。

 

その話を聞いた数日後、渋谷区のバス停で、ホームレスの女性が頭部を殴られて死亡した事件を知った。
私はそれと同時に、数カ月前に参加した夜回りパトロールで出会った女性野宿者の方を思い出したのである。
夏の暑い日に、彼女は丈の長いダウンジャケットを着込んで汗をかいておられ、二週間経っても同じ服装で、おそらく着るものがダウンジャケットしか無いようだった。
このままでは熱中症になってしまうと思った私は、夏服を差し入れることにした。
だが、一カ月近くに亘り時間帯を変えて何度尋ねても彼女はおらず、支援者の方いわく「熱いから一時的にどこかで保護されているのかもしれない」とのことだった。
季節が変わって冬になった今も、あれから一度も彼女を見かけていない。

 

渋谷の事件を知り、私は彼女との出会いを思い出さずにはおれず、未だにどこにいるのか気になっている。
“縁が無い”ということ、それゆえに縁をつなぐことが難しい状況にある野宿生活者の方々だが、きっと野宿生活に至るまでに様々な出来事があったはずであり、いわゆる一般的な生活をしていた方も多いという。
どのような人も、何かしらのきっかけで生活が困窮し、生活の基盤が揺らぐ可能性はゼロではない。
他人事ではなく自分事として捉える想像力が求められているように感じる。

 

私は寿地区やホームレスと聞くと、男性を勝手にイメージしていた。今までも関わった方はほぼ男性であったが、その中で働き、また男性と同じように野宿生活をする女性の存在を知り、男性に限らずもっと彼女たちのことが知りたいと思っている。