障害者とその家族のこと

「出生前診断受けたら?」
第二子を妊娠した妻に、私の母(妻にとって姑)がこう尋ねました。

出生前診断とは、胎児に遺伝子疾患や奇形がないか調べる検査のこと。
検査を受ければ子どもが生まれる前に、(特定の)障害の有無が分かります。
胎児に障害があると判明したとき、妊娠を継続するか中絶するか夫婦の選択に委ねられますが、95%の夫婦は中絶を選択するといわれています。
「命の選別」「優生思想」と批判されることもあります。

この言葉だけ聞くと、私の母は優生思想主義者か障害者差別主義者かと思われるかもしれません。
しかし私は母の言葉を重く受け止めました。
なぜなら母には、中度知的障害の弟(私から見て叔父)がいるから。
そして祖父母亡き今、その弟を世話しているのは母だからです。

第一子妊娠のときは何も言わなかった母。
第二子になって出生前診断を薦めたのは、孫に自分と同じ苦労をさせまいと案じたからにほかなりません。
母の人生、障害のある弟を持った者にしか分からない苦悩や葛藤があったのだと思います。

私たち夫婦は母の助言を尊重しつつも、よく話し合った末に出生前診断を受けませんでした。
40歳を過ぎた私たちにとってはこの妊娠がおそらくラストチャンス。
なにより、もし障害があったとしてもお腹に来てくれた子を諦めることなんてできない。
(また出生前診断の検査には流産のリスクもあります)
それはある意味「親心」という名のエゴだったかもしれません。

障害者の家族について考えてほしい

なぜこんな話をしたかというと、皆さんと「障害者の家族」について考える機会を持ちたいと思ったからです。
これまで障害者本人のことはたびたび議論されてきました。
一方で障害者の家族に関する議論は今も十分に尽くされているとは言えません。

横浜市においては、平成21年策定の「第2期横浜市障害者プラン」でようやく光が当たり始めました。
それでも「親亡き後の障害者の暮らし」が焦点で、家族に対する支援にはあまり触れられていません。
特に兄弟姉妹についてはほとんど言及されていないと言ってもいいでしょう。

順序どおりならば親は子より先にこの世を去ります。
そのとき障害のある子を見る責任は、真っ先に兄弟姉妹にのしかかります。
「地域で障害者を支える」と言ってみたところで、生活面・経済面の責任は結局兄弟姉妹に回ってくるのです。
実際母はたびたび遠方に住む叔父の世話に行っていますし、そのことで父母が喧嘩するところも見てきました。
(最近は父も諦めたようですが)

今後叔父が入院したり介護の必要が出てきたときの見通しはまだ立っていません。
そしてもし母が叔父より先に他界したら、一体誰が叔父を見るのでしょうか。
私自身は、幼い頃いつも遊んでくれた叔父を引き受けたいと思っていますが、妻や子どもたちのことを考えると難しいところです。

第4期横浜市障害者プラン策定を機に…

ことぶき協働スペースではこの1年間、障害者の「働く」や「地域生活」をテーマに、障害当事者に関する学びを深めてきました。
その中で見え隠れしたのは障害者の家族が持つ苦労や不安でした。
障害者に夢や希望があるように障害者家族にも希望があって、そこに行き違いが生じることもあります。
たとえば障害者は一般企業に就職して働きたいが、親は己が亡きあとも障害ある子を見守ってくれる福祉事業所に預けたいなど。
本人の自立したい気持ちも親の心配も分かるだけに、なんとか双方の希望を叶えてあげたいですが、残念ながら日本社会はまだそこまで成熟しているとは言い難い。

来年度は6年ぶりに横浜市障害者プランが策定されます。
その素案を拝見したところ、これまで以上に障害者の家族の声が反映されたものになりそうです。
障害当事者だけでなくその家族も、誰もが充実した人生を生きられる社会の実現。
「第4期横浜市障害者プラン」がその一歩になると期待しています。
来年度、ことぶき協働スペースではこの障害者プランを学ぶ場面を持ちたいと企画していますので、その際は皆さまにも是非ご一緒いただければと思います。

第4期横浜市障害者プラン(素案)の表紙

横浜市ウェブサイト 第4期横浜市障害者プラン
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/fukushi-kaigo/fukushi/plan/4th_plan.html

(1549字)

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