【EVENT REPORT】「炊き出しと生きる権利」人権サロンvol.1 を開催しました

 

 人権サロンは、暮らしのなかにある差別や偏見を問い直す、特に寿地区で大切にされてきた人権の視点を考える対話の場です。第1回は、30年にわたって寿地区で継続されてきた「炊き出し」の背景や、そこに集う人々の思いを語り合いました。

日時:8月2日(月)14:00~16:00
会場:ことぶき協働スペース 

 

ゲストスピーカー

由良哲生さん
(寿日雇労働者組合)

1949年に京都府綾部市で生まれる。高校卒業後、精密機械の会社に入社。24歳の時、仕事で川崎に移動。第一次オイルショックの時にリストラにあう。その後、約1か月間野宿生活に至ってしまう。 1999年暮れから2000年の越冬に参加したのがきっかけで、越冬明けの1月から組合に入り、活動を行い、現在まで続く。

森英夫さん
(寿医療班)

1971年東京都生まれ。看護学校在学中の1995年頃より寿医療班の相談活動に参加する。2003年寿町に転居し、町内の診療所・訪問看護ステーション・介護事業所に看護師、ケアマネージャー兼ヘルパーとして勤務。 2011年東日本大震災をきっかけに、社会・政治活動に参加する。現在NPO法人寿クリーンセンター副理事長。港南区在住。

 ゲストのお話は、第一次オイルショック後、野宿する日雇労働者が増えた社会状況から始まりました。食事ができない人への緊急支援として、「もう見ていられない」という老人クラブの方の声かけに応え、日雇労働者組合や教会が連携し、その時々の地域の状況に応じて工夫を重ねてきたことが語られました。

 肉体労働で野菜を摂る習慣のない人々に、野菜豊富な消化のよい雑炊がつくられたのも工夫の一つです。カンパの野菜は多種にわたり、肉や魚とともに切り込み、煮込みます。作り手は、教会の人、野宿の人、寿に住む人など垣根なく、週ごとにカレー、味噌・醤油・塩の4つの味を楽しめます。

 大切にされたのは、食べることだけでなく、一人にしないこと。相談できる場、お互いを理解し合える場として、一人一人が抱える見えない不安に目配りすること。今できることをやるだけという「炊き出し」がずっと続いてきたのはなぜか。労働問題に留まらない様々な社会背景の中で、人とつながることを大事にしてきた寿の人々の優しさを知ることができました。また、多くのボランティアの参加が、差別に走りがちな世論に流されず現場を知る、学習の機会となってきた側面も示されました。
 
 

 

 ゲストの話を受けて、炊き出しに並ぶことへの切実な思いが、寿に住む人から語られました。活動の社会的意味を理解したという男性は、寿で働くだけでなく個人でできることを広げていきたいと希望を語りました。普段の暮らしの身近な出会いを気にかけ、声をかけ合うことの大切さを自身の体験から話してくださったのは、居場所づくりや国際協力の活動者です。また、女性の野宿者が増えている背景を事例に、様々な事情で孤立を余儀なくされる社会状況を再認識することができました。
 
 食をとおして人とつながる機会は、「生きる権利」を大事にする営みです。その場をつくる人々の熱意は、偏見でなく現場のありのままから学ぶことが基調にあります。参加するボランティアの気持ちが温かいコミュニケーションと感謝をつないできたこと、その信頼関係が「炊き出し」持続の秘訣であることを最後に確認し、人権サロン第1回を締めくくりました。今後も多様な立場の人同士、身近な「人権」について語り合う場を開催予定です。(文:徳永)